子育てを含む「育成」や組織マネジメントにおいて、
「自律した人」を生み出したい、育成したいとなった時に、
「指示型」でなく「傾聴型」に移ることがよくあります。
自分で考えられるようになってほしいから、
引き出すために話をよく聞こうとするのだけど、
寄り添うばかりで成果が出ない。
「これは傾聴型も自律した人を育てたり、成果を達成するのに向いてないんじゃないか」
と思い始めます。
仰る通り!
実は傾聴型は、育成者が疲弊しやすい上に、
寄り添うばかりで行動変容が見られにくいという特徴があります。
「相談にばかり来られて、私はカウンセラーじゃなーい!」と思ったり、
「何だか仕事の内容が、未来のための仕事ではなく、日々の鎮火作業に追われるようになってきたぞ」と思ったりすることが、私もありました。
しかもその時、部下が170名もいたので、
相談に来られる回数もそれはそれは多く、
一日の大半を「傾聴」と「アドバイス」で終わるという心身疲弊する日が続く・・・ということもあり、毎日ぐったりしていました。
自律した人を育てる上で大事なこととして、
平本式で言うところの「対話型マネジメント」というものがあります。
これは、その人の価値観や人生の中で達成したいものを引き出し、
それと会社の方針の共有ゾーンを見つけ、その領域で貢献していくというものです。
この対話型マネジメントは、最初こそ引き出しに時間を要しますが、
バチッと本心からの価値観や気持ちを引き出してしまえば、
あとは本人が「やりたい!」と思って自走していくので、
日常の勇気づけや、定期的な方向修正の1on1だけで成果を上げていけるようになります。
読んでいてお気づきの方も多いかもしれませんが、
この対話型マネジメントの手法は、コーチングです。
ただ、コーチングにも様々なやり方があります。
その中でこの対話型マネジメントに用いる平本式コーチングのポイントは、
・身体感情からの本音を引き出す
・気持ちに寄り添った上で行動を引き出していく
という点にあります。
「やろうと思っていてもできない」
「求められていることはわかるが、どうもできない」
といった時、行動を妨げているのは感情です。
仕事をする上で、感情に寄り添っていては成果が出ない、と思いますよね。
でも、成果を生み出すのは行動です。
その行動を生み出すのは感情です。
その感情に寄り添って
「うんうん、嫌だよね」
「そっかぁ、大変だったね」
と聴いているだけが「傾聴型」です。
対話型は、それに対して、
「うんうん、嫌だったよね」だけでなく、
「それの何が嫌だった?」と、価値観まで深掘りします。
嫌だったことの裏返しが、自分の価値観です。
人が悲しむことが嫌 ⇨ 人の笑顔が見たい というように。
そして出てきた価値観を生かして、
「だからこそ、どうしていきたい?」と相手の中から引き出します。
例えば・・・
「この作業、成果を出す上では大事だってわかるのにできないんだよなぁ」
⇨そっかー、できないよね。
⇨この作業の何が嫌かって、他部署との調整が面倒臭いんだよね。
⇨調整が面倒臭いっていうと、具体的には、互いの利害がぶつかり合って、
どっちかが得すればどっちかが損するのが嫌ということ。
⇨それの何が嫌かっていうと、WIN -WINじゃないことが嫌。
⇨それの何が嫌かっていうと、笑顔になれない人がいるってこと。
⇨私は人の笑顔が見たい。だからこそ、この調整が人の笑顔に繋がるためにはどうやりたい?
こんな感じです。
指示型で終わっていた時の私は、
「調整が面倒臭い」という感情を「怠けている」と捉えて無視し、
「とりあえずやる!」という選択をしていました。
傾聴型で終わっていた時の私は、
「調整が面倒臭い」ということに対して、
「そっかー、面倒だよね。」だけで終わっているか、
「面倒だよね、じゃあ私がやる」か、
「面倒だよね、でも頑張ろうか」と寄り添っているだけで最後は蓋するだけ、
というような状態になっていたと思います。
相手の困りごとに対して、傾聴し、
解決策を自分が提示してあげないといけないと思っていたこともありました。
指示型の人は、特にそう思うと思います。
相手の話を要約し、問題点を明確にし、解決策を提示する。
これってスーパーバイザーという仕事をしている人には「あるある」な感覚だと思うのですが、考えてみると、自分が人に相談したい時って、
相手からされたアドバイスが刺さらないこともありますよね。
刺さらないだけならまだしも、「そういうことじゃないんだよな」とか
「ただ聴いて欲しかっただけなのに、正論をぶつけられた」なんて感想を抱くときすらあります。
それは、「答えは自分の中にあるから」とよく言いますが、
自分の価値観にマッチしていなかったり、感情が置き去りにされていたりするからかと思います。
とはいえ「そうだよねー!わかるわかる!」と傾聴や共感だけしていても、
前には進めない。
それを解決するのが、
価値観を引き出して、次の行動を生み出す「だからこそ、どうしたい?」なのです。
この問いを繰り返していく中で、内省が深まり、行動と一致感が出てきます。
そうすれば自分の感情コントロールだけでなく、
成果を生み出す行動を取れていく、というわけです。
「どうなりたい?」「どうしたい?」は、いきなり聞くと、
「私には特にないです」と返ってくることがほとんどです。
でもそれは、ただ気づいていないだけで、ちゃんとみんな持っています。
身体感情から掘り下げてみると、絶対にあります。
それを活かしていくだけで、毎日幸せな気持ちを感じながら、
成果に向かっていけるって、最高ですよね!
そんなことが実現可能なコーチング方法は、また別の機会に!